割りにくい窓ガラス、割れやすい窓ガラスについての講演
代表取締役 社長の海野が講演する場面
「地震に備える」をテーマに、西多摩新聞社様主催で、2005年5月27日19時からセミナーが開催。
今回のセミナーでは、あきる野市のエコビルドの平野社長と、窓工房の海野が講師を務めました。
セミナーの2ヶ月前になる2005年3月20日に、福岡県西方沖を震源とする地震が発生。福岡市中央区天神の「福岡ビル」のガラスが割れ、道路に大量に落下することがありました。
そのため、この講演では、割れにくい窓ガラス、割れやすい窓ガラスについて話してきました。実際にガラスを割ってもらう実演も取り入れています。
エコビルドさんは「住まいの地震対策と免震システム」について講演、窓工房の海野は、「福岡県西方沖地震に学ぶ、ガラスは飛び散らない」についての講演です。
耐震対策というと、柱の補強などのイメージが強いと思います。
ですが、割れにくい窓ガラスに替えるのも重要な耐震対策です。
地震が発生して窓のガラスが破損すると、避難口に割れたガラスが散乱します。
そうなると、脱出するときに怪我をする恐れがあります。 地震のときの避難口は、玄関に限らず窓になることも十分考えられますからね。
地震発生時に割れやすいガラスとは?
サンプルのガラスを持って説明
今回の講演では、様々なガラスをサンプルとして持参しました。
持参したガラスは、フロートガラス、網入りガラス、強化ガラス、合わせガラスです。
フロートガラスとは、皆さんのお宅で最もよく使われている板ガラスです。
透明でも、すりガラスでも、ざらざら感のある不透明な型ガラスでも、割れやすさの観点から見た場合、どれも同じです。簡単に割れてしまいます。
網入りガラスとは、ガラスの中に針金が入ったガラスです。
別名、防火ガラスと言われているガラス。火災が発生してもガラスが落下しにくいため延焼を防ぐ働きがあるガラスなんです。
福岡県西方沖地震でも、この網入りガラスは落下しなかったようです。
地震発生時にも、比較的飛び散りにくいガラスだといえます。
ガラスを割る実演
強化ガラスとは、字の如く衝撃に大変強いガラスです。
種類にもよりますが、だいたいフロートガラスの6倍もの強度があります。
また、地震発生時も当然割れにくく、万が一家具などがぶつかり破損されても、ガラスが粒状になるため避難するのに怪我がしにくく安心です。
そのため、銭湯であったり学校であったりと、そのような場所で広く使われているガラスです。
ただ、一点に集中的に力が掛かると比較的簡単に割れるガラスでもあるため、防犯対策には効力がないです。
合わせガラスとは、防犯ガラスのことです。
地震対策には、合わせガラスが1番だといえます。
地震発生時に割れやすい窓はどんな窓?
コーナー窓
コーナー窓
左のような窓は、一般的に震災発生時は割れやすいです。
ガラスが付き合わさっている窓は、要注意と言えます。
柱がない分、ガラス自体に直接力が加わるためですね。
FIX窓(はめ殺し窓)
FIX窓(はめ殺し窓)
また、左のような固定されている窓も注意が必要です。
固定されている窓とは、FIX窓、あるいははめ殺し窓といわれている窓です。
もちろん人が出入りすることはできませんし、風を入れるための喚起すらできません。はまっているだけで開け閉めできない窓になります。
固定されているので、力を逃がすことができないため、割れやすくなります。
地震発生時に割れにくい窓はどんな窓?
引き違い窓
引き違い窓
このような窓は、一般的に震災発生時は割れにくい窓です。引き違い窓と言われている窓です。
横にスライドさせて動く窓だと言えばイメージが沸くでしょうか?
どのご家庭にもよくある窓だと思います。
引き違い窓は、枠とガラス戸の間にゆとりがあります。地震により窓が揺れて、建物がゆがんだとしても、ガラスには力が加わりません。
そのゆとりのおかげで、引き違い窓は割れにくいと言われているんです。
実際に、講演の参加者にガラスを割ってもらいます。
参加者にガラスを割ってもらう様子
みなさん、ガラスを割る機会ってなかなかありませんよね?間違えて割ってしまったことはあるかもしれませんが、自発的に割ったことはないと思います。
そこで今回は、それぞれのガラスを、講演会に参加して下さった方に割ってもらったんです。
セミナーの目的は「地震に備える」こと。問題になるのは、ガラスの割れ方です。そこのところを注目してみて頂きたいと思います。
ガラスの割れ方を検証していきます。
左:普通の板ガラス 右:網入りガラス
フロートガラスを割ってみる
フロートガラス
このガラスは、一般によく使われている板ガラスです。
私たちはフロートガラスと呼んでいます。今回はフロートガラスの中の型ガラスという不透明なガラスを用意しました。
女性の方にバールを持って割ってもらことに。女性の力でも、1回の衝撃だけで簡単に割れてしまいました。
問題なのは割れ方です。
割れたガラスの破片が飛び散り、避難するのに危険であることを理解してもらえました。
網入りガラスを割ってみる
網入りガラス
右側のガラスは、網入りガラスと呼ばれている防火ガラスです。
先ほども述べました通り、福岡県西方沖地震でも、破片の落下等の被害がなかったと言われているガラスです。
網入りガラスもバールによる1回だけの衝撃で、簡単に穴が開きました。ただ左側のフロートガラスに比べると、割れた破片があまり飛び散っていません。
この点からも、防犯対策には期待できないけれど、耐震対策には効果があるといえます。
網が嫌だから透明なガラスに替えて欲しいという問い合わせはよくあります。網が入っていない透明タイプの防火ガラス「パイロクリア」も販売しております。
しかし、「耐震対策として網入りガラスに取り替えて欲しい」という問い合わせはないですね。
もし、耐震対策としてガラスを替えるのでしたら、次に述べる合わせガラスがお勧めです。
引き続き、ガラスの割れ方を検証していきます。
左:強化ガラス 右:合わせガラス
強化ガラスを割ってみる
強化ガラス
強化ガラスはなかなか割れずに大変でした。男性にかなりの力で割ってもらったんです。
本当は、「強化ガラスも結構簡単に割れるんです」と言うはずでした。けれど、これがなかなか割れず内心冷や冷やものでした。
しまいには、まだ20代の男性で力もありそうな方が「いや、無理です、割れません・・・」と泣き言をいう始末。そこで私も小声で「頑張って割って下さい、割れるはずですから・・・」と。
なんとか割れて、普通の板ガラスよりも強度が強いことがわかってもらえたとも思います。
強化ガラスの場合は、割れたガラスの破片を見てもらいたかったんです。破片というほど大きい物ではなく粒状なんですね。
だから、万が一割れてもガラスが粒状なため安全だといえます。それでも、ガラスには変わりないですから100%安全ということではありません。
ちなみに、車のサイドガラスは強化ガラスになっています。
合わせガラスを割ってみる
防犯ガラス「セキュオ60」
右側のガラスは、日本板硝子製の防犯ガラス「セキュオ60」です。ガラス屋の立場からみましても、耐震対策に1番のお勧めのガラスです。
1つ目に、先ほどの強化ガラスと同様割れにくいこと。
2つ目に、割れてもガラスの破片が飛び散らないということ。
実演では、強化ガラスがなかなか割れなかったため、次に防犯ガラスを割ってもらった方は、はじめから容赦なくバールでバンバン叩き割っていました。
写真の通り、破片が飛び散らないのが特長です。この写真の状態になるまで、相当な回数を叩きました。
ちなみに、車のフロントガラスは合わせガラスで出来ています。
講演後の感想
実際に割ったガラス
耐震対策の中心になるのは、やはり建物の柱の補強だと思います。
けれど、2005年3月に発生した福岡での地震により、ガラスの飛散に注目が集まりました。
地震発生により、被害がでやすい窓ガラス、被害がでにくい窓ガラスを言葉で説明するだけではイメージが沸かないだろう・・・。
それなら説明後に、それぞれのガラスを割ってもらおうと考えました。私の勝手な考えなのかもしれません。
けれど、1年たっても、2年たっても、「あのガラスはほんと割れにくかったなぁ・・・」と、覚えてくれていたら嬉しいですね。
後片付けの様子
終わった後は、片付けが大変でした。
西多摩新聞社さんの方たちなどにも手伝ってもらうことになって、ほんとご面倒をお掛け致しました。ごめんなさい。
もちろんブルーシートを敷いて実験をしましうた。それでも思った以上にガラスが飛び散っていましたね。
次回どこかで講演をする場合は、その辺の段取りも改善していこうと思いました。